荒牧 重雄 著「噴火した!: 火山の現場で考えたこと」
岩石学者・火山学者荒牧氏がこれまでの研究生活を火山噴火を中心に振り返って著した書籍。
荒牧氏は1930年生まれであり、執筆時に91歳であった。
第1章は筆者が生まれる前の出来事である西インド諸島プレー火山の噴火現象について記述。ついで地質を専攻するきっかけとなった伊豆大島1950~1951年の噴火、続いて博論で行った浅間山天明3年噴火の研究について書き、その後年代順にかかわった火山について、つづっている。
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目次
第1章 ひとつの都市が消えた――火砕流序説、プレー火山の噴火
第2章 火山研究のきっかけ――伊豆大島1950-51年噴火
第3章 史料と足で読み解いた博士論文――浅間火山天明三年噴火
第4章 実験岩石学や巨大カルデラとの出会い――フルブライト留学生としてアメリカへ
第5章 フランス気質、イギリス気質――火山をめぐるヨーロッパの国民性
第6章 ハワイの楯状火山はなぜ上に凸か――キラウエア火山1963年噴火
第7章 月面は玄武岩か、岩塩か?――アポロ11号の月面着陸
第8章 溶岩と氷河の国アイスランド――極地での野外調査
第9章 フランス人の大論争に巻き込まれる――スフリエール火山1976年噴火
第10章 「火砕流」と言えない?――有珠火山1977年噴火
第11章 山体崩壊と爆風の威力――セントへレンズ火山1980年噴火
第12章 迅速な避難と溶岩冷却作戦――三宅島1983年噴火
第13章 全島避難の島で――伊豆大島1986年噴火
第14章 火砕流の恐怖、目撃者の証言――雲仙普賢岳1991年噴火
第15章 大都市のそばの火山――イタリアの火山と防災
第16章 ハザードマップと対策本部――有珠火山2000年噴火
第17章 火山噴火災害対策について考える
専門的な内容をあまり出さずに全体には読みやすい文体で日記のように書かれた自伝的なエッセーである。火山噴火に関する豊富なエピソードは、体験したものならではの非常に臨場感あふれる記録となっており、読みごたえがありました。伊豆大島の噴火の項では筆者と当時の東京都知事との極秘会談について明かされています。雲仙普賢岳の火砕流災害で聞き取った体験談集とこの災害で死亡した3人に外国人火山学者の遺体確認という恐ろしい話も生々しく書かれています。
私が個人的に「へえ・・・?」だったのが第6章の「ハワイの盾状火山はなぜ上に凸か」というところです。ハワイ型と呼ばれる火山は玄武岩溶岩を主に噴出し、楯状火山という盾を地面に横たえたような形の火山を作ります。山頂部はほとんど水平で、山麓は傾斜があります。山頂が水平になるのは玄武岩質溶岩の粘性が低いためです、高校向け教科書や一般書ではそう説明されています、それ以上の説明はありません。しかし、なぜ上に凸の形になるのかは火山学の専門書にも今のところ説明は なく、大家である荒牧氏にも「よくわからない」とのことで、大変意外でした。
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