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日本国憲法には、その制定の経緯から無効であるとする議論があります。この書籍はいくつか存在する無効論のうち、弁護士の南出氏が主張する無効論(氏は「新無効論」と呼称)について、一般向けに主張を伝える目的で書かれた本です。
日本国憲法以前には、明治22年に発布された大日本帝国憲法という憲法がありました。大日本帝国憲法は天皇が定めた欽定憲法として発布されています。日本国憲法は大日本帝国憲法の規定する改正手続きに従って改正されました。そのため、形式的には天皇が定めた欽定憲法の形で公布されました。現在、日本国政府は日本国憲法は大日本帝国憲法が改正されたものであるとの立場をとっています。
しかし、憲法改正が行われた際の審議は、当時、日本を占領していたGHQの支配下で行われていました。憲法の原案の作成はGHQであり、帝国議会の審議による修正が行われたものの、それはGHQの承認する範囲であったようです。新憲法制定が日本の意思で行われたように見せかけていた訳です。
憲法制定が日本の自由な意思ではなくGHQ主導で行われたため、新憲法への憲法改正は無効であるという議論が新憲法制定当初から根強くありました。もちろん、いきなり新憲法を無効としてしまうと日本国憲法下で制定・適用されてきた様々な法令が無効となってしまう問題があります。
南出氏はこのような従来の無効論を「旧無効論」と呼び、「新無効論」なる日本国憲法無効論を主張しています。その概要は
日本国憲法は憲法として無効であるが、条約として有効である
ということです。
このように考えることにより、日本国憲法下で制定された様々な法令をそのまま有効とすることができるため法的な安定が保たれている点で優れているとしています。ただし、南出氏がいう「旧無効論」の立場でも日本国憲法化の法令を直ちに無効化するような乱暴な議論ではなく、実際には法的安定性を保つための工夫はあるようです。
憲法が無効である根拠としてはGHQによって天皇大権が制限されていた状況での改憲は、帝国憲法が摂政を置いている間の改憲を禁じている条文に抵触するからであるとしています。そして、日本国憲法が憲法として無効の状況にあるため、国会の過半数による無効確認決議をおこない、日本国憲法が憲法として無効であるとの認識を示すべきだとしています。
では、一般の法学の世界では日本国憲法の有効無効論はどうなっているのでしょうか。憲法学の代表的な教科書である芦辺信喜氏による「憲法」の憲法改正の項をみると、憲法改正の手続きによりさえすればどのような改正も可能と考える説もあるが、通説では改正には限界があるとの考えをとっています。例えば、日本国憲法の改正権は国民主権に基づいているため国民主権を否定する内容に変更することはできないとしています。また、日本国憲法96条の憲法改正にかかる国民投票も、国民の制憲権を具現化したものであることから廃止は許されないと一般に考えられているとのことです。
同じ理屈で行くと、帝国憲法から日本国憲法への改正もできないことになります。憲法学の通説もそうであるらしく、帝国憲法の改正手続きによる日本国憲法への改正は、形式を拝借したにすぎず、実質的には敗戦によって一種の革命状態が発生して帝国憲法が停止し、日本国憲法が新規に制定されたとみなしているようです。
憲法学の通説、日本国憲法旧無効論、日本国憲法新無効論のいずれも、帝国憲法から日本国憲法への改正は不可であるとしています。これらの議論からわかることは、日本国憲法が有効であるか否かは、法の条文から理論的に演繹されるものではなく、結局政治状況( ≒ 国民の意思)によって決定されるといえると思います。
南出氏が提案するように、仮に国会の過半数で日本国憲法無効確認決議をおこなったとしても、次の選挙で国会議員が入れ替わった際に、先の国会による無効宣言は取り消しますと言ってしまえば、南野氏が主張するような法的安定性は実現しません。本当にやるなら世論の圧倒的な後押しが不可欠でしょう。
この本の議論をに触れることにより、日本国憲法を頂点とした国内の法体系は当然に成立しているわけではなく、これを担保しているのはあくまで政治状況であり国民の意思であるということに気づかされます。
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