初めて出会う岩石学 ー火成岩岩石学への招待ー
山崎 貞治氏による初学者向けの火成岩岩石学解説書。
火成岩岩石学の基礎といえば相平衡図です。相平衡図や化学や材料工学などでも扱う、基本的なツールですが、高校の化学や地学しか知らない状態から学習を始めると、ちょっととっつきにくいところはあります。そのため、大学専門課程向けの火成岩岩石学の教科書では必ず説明されていますが、ブルーバックのような一般向けだと、ほとんど解説されていません。
(画像はアマゾンより)
この本は、火成岩の分類などの説明もありますが、学者向けの相平衡図についての解説を主要な内容としています。大胆に簡略化し、非常にわかりやすく解説してくれます。
極め付きは
「単斜輝石と斜方輝石というのは、ちょっと難しですが、少し形が違うものだと思ってください」
などと書いてあります。単斜輝石と斜方輝石(現在、日本語としての用語は「直方輝石」に変更されている)は火成岩を構成する主要鉱物であり岩石学では頻繁に表れる重要な鉱物であり、岩石学を学ぶものとしては知らないのは論外ですが、その2者を「少し形が違うもの」と言ってしますところがすごいところです。
なんて優しいのでしょうか!
このように大胆に簡略化した形で、わかりやすさ最優先で解説が進んでいきます。私が大学生だった頃、学生仲間の間では密かな人気を博していました。
同時に教官からに評価はすこぶる悪いものでした。おそらく大胆すぎる簡略化のため、違和感のある説明が多いのでしょう。残念ながら私の知識では、この本の問題点を的確に指摘することが出来ませんが。
これから岩石学を学習する一般的な能力の学生には一度読んでみる価値があると思います。もちろん、本書の性質上、すぐに別の教科書で知識を上書きする必要があります。
ただし、現在この書籍は増刷されていないらしく、新品は流通していないようで、中古は定価よりもやや高い価格で取引されているようです。まずは入手できる教科書を読んで、理解できるならばこの本は不要ですし、よくわからないなら1700円未満なら買ってもよいか?と思います。
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