N値の話
土木設計コンサルタントである大成基礎設計㈱の技術者を主要メンバーとして構成されている「N値の話編集委員会」が執筆した書籍です。
土木構造物や建築物の築造を計画する際には基礎地盤の状態を知ることが必要となりますが、その際によく行われるのが、ボーリング調査です。土木・建築目的のボーリング調査の大半では「標準貫入試験」という試験を行います。(標準貫入試験を実施しないのはダム基礎に関するボーリングや地すべり調査においてコアをよく観察したい場合、斜めや水平に掘削する場合などです。)
標準貫入試験とは、ロッドの先端に地盤に押し込むための器具を取り付け、ロッドの上端に63.5kgの重り(モンケン)を落下させ、落下回数と地盤への貫入長の関係から地盤の強度を推定する原位置試験です。通常は、地盤に30cm貫入させるためにモンケンを落下させた回数を記録しそれをN値と呼びます。
N値は定性的に地盤の強度を評価するものですが、地盤の持っている多数の要素が複合的に関係して決まってくるものであるため、N値が地盤の何を表しているのかは明確ではありません。地盤の強度は粘着力Cと内部摩擦角Φで表現することが多いのですが、N値のうちどれだけがCによって発生し、どれだけがΦによって発生したかを正確に推定することはできません。CとΦを精度よく決定したい場合には別の試験が必要となります。
それでも標準貫入試験はボーリングを実施するのであれば簡便に実施でき、追加のコストが安いという利点があります。そのため、昔から大量に試験が実施されており、データの含蓄が多く、土質定数とN値の関係や地質ごとのN値の特性が良く研究されています。このことから、およその地盤の状態を安価に知りたい場合には便利な試験であります。
この書籍は、そんなN値について、多く提案されている地盤定数との関係式や地質とN値の関係を1冊に取りまとめた、地質調査業関係者には有用な本となっています。
旧道路公団関係の推定式が掲載されていない点はちょっと残念ですが、N値に関する多くの情報を網羅し、背景理論の概要も確認できるため、非常に便利な一冊です。
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