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2020年7月 7日 (火)

大学への依頼でPCR検査は拡大できるか

2か月ほど前になってしまいましたが、以前にこんなニュースが出ていました。

大学のPCR検査能力、文科省が調査 山中教授も提言


戸田政考、合田禄

 新型コロナウイルスのPCR検査を実施する能力が全国の大学にどれくらいあるかについて、文部科学省が調査を始めたことがわかった。PCRの検査機器は大学の研究室に相当数あり、研究者から「活用すれば国内のPCRの検査能力は大幅に上がる」という指摘が出ていた。

 PCR検査は、植物や微生物などの研究では一般的に使われている。ただ、診療を目的とした検査をするには都道府県などに登録申請した上で、病原体を取り扱える特別な施設で実施する必要がある。

 文科省は11日付で約1千の国公私立大学や研究施設などに事務連絡を出し、機器の台数や、1日当たりの最大検査可能数、病原体を取り扱える施設数などを14日までに回答するよう求めている。

 集計結果を厚生労働省に伝え、検査の件数を増やす必要がある地域の大学に余力があれば、協力できるようにするという。ただし、新型コロナの検査には実験をする人が感染予防のための研修を受ける必要などが出てくる可能性もある。

 京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授も6日、安倍晋三首相とともに出演したインターネット番組で、「PCR検査の機器や技師の不足が今後の課題」と指摘。「私の提案」として自身が所長を務めるiPS研が活用できると話し、「新型コロナのPCR検査をできる機器が30台くらいある」と明かしていた。

 その上で、「その機器を使って普段からPCRをしている研究員たちが何十人かいるが、自粛で多くの人が実験せずに在宅になっている。大学の研究所などの力をうまく利用すればPCRの検査能力は2万をこえて、10万くらいいける可能性がある。研究者として検査能力の向上に貢献したい」と話していた。(戸田政考、合田禄)

https://www.asahi.com/articles/ASN5D7HZRN5DULBJ00J.html

 

 新型コロナの感染有無を調べるためのPCR検査について、山中教授が大学等が持っている機械と人を使えば、検査数を大幅に増やせると主張しているとの話題です。山中教授はワイドショーなどにも出演して、同様の主張を行っています。

 新型コロナに対するPCR検査数はその数を比較すると欧米諸国や韓国などに比較して少なく、そのことを批判する人たちがいます。また、医師が必要と判断した検査が行われなかったり、感染者が多かった時期は、検査待ちが数日発生したりといったことがあったため、今後の新型コロナや他の感染症が流行した場合に備え検査体制の充実が望まれます。

 ただし、ワイドショーなどで主張されている検査拡大は

「国民を片っ端から検査して、感染者をどんどん隔離する」

ということを目的として主張しているものが目立ちます。

 この目的で検査を拡大しようとすると、最大の障害になるのは検査の精度です。このことは感染症の専門家と思しき人や、検査のことが若手いそうな医師の意見を集めてくるとわかります。これらの人たちはほぼ意見が一致しているので間違いないところでしょう。まとめると以下のようになろうかと思います。

 感染者を検査して陽性となる確率は一般に5割~7割とされており、あまり高くありません。さらに、発症4日前以前だと、検査で陽性が全くでないという報告もあり、無症状者はウイルス量も少ない傾向にあることも考えれば、症状のない国民を片っ端から検査しても、検査で陽性となるのは半分以下であろうと想像されます。また、確率は高くはないものの、感染していないものが陽性となる場合も存在します。つまり、「片っ端から検査して、片っ端から隔離」を本当に実施すると、百万人規模の陽性者が出て隔離が必要となり、しかも、真の感染者は半分以上見逃しているという状態となります。それならば無症状者の無差別検査は意味が薄くなります。検査能力の増強は必要ですが、この理由による検査増の主張は、排除しなければなりません。もちろん全国民検査などを目指そうとすると、膨大なリソース(人員、機器、消耗品、検査室、コスト等)を食うことになりとても実行できるものではありません。

 このことを前提としたうえで、検査能力の増強について、どうなのでしょうか。

 では、山中教授の大学等の研究者や機械を活用して、新型コロナウイルス対策のためのPCR検査が拡充できるのか調べてみました。といっても、自前で一から勉強して理解できるようにするのは困難なので、わかる人の意見を集めてみます。

 研究機関側の意見としては

・PCRがやれる機械自体はある。

・うちの古いやつでよければいつでも貸し出せる。

・自分はPCR試験はできる。しかし、臨床用の検査をやっていいかどうかはわからない。必要な精度があるかどうかは知らない。

・機械はあるがRNA抽出キットの在庫が少ない

といったものが多く見つかりました。試験自体はできるがそれでいいかどうかは臨床用試験について、わかる人でないと判断できなさそうです。

 医療用PCR検査について知っていそうな人たちの方を見てみると、まず臨床PCR検査について検査機械以外に必要なものとして

・検査を実施するための臨床検査技師

・検体採取のための医師

・ISO 15189を取得した検査室

・受検者を隔離する部屋

・採取にためのスワブ、RNA抽出キットなどの消耗品

といったものがあるようです。ISOが求める検査室の具体的要求事項については調べきれませんでしたが、このISO認証の取得も結構大変と聞くので、一般的な大学に同等の設備があるかと言えば、なさそうに思えます。もちろん大学にはほぼ教官と学生だけで、技官などは絶滅危惧種なので、臨床検査技師に代わって多くの検査をこなせる人員というのはいないでしょう。もしやるなら、大学の研究教育をストップしてということになるでしょう。

 検査に詳しそうな、医療系の方々の意見はあまり多くは拾えなかったのですが、大学の研究員が実験としてやる作業のレベルと、臨床検査は全く違うという意見が見られました。無理に研究機関を動員すると、精度面でも問題が出るようです。もともと、臨床検査のための基準を満たしていない施設や人員で臨床検査をやること自体が違法となっており、精度面の問題を考慮してそういった法令となっているもの思われます。(検査ひっ迫に備えて、大学等の規格外施設での検査も法令上は違法とならないような措置は取られたようです。)

 以上、見てくると、大学等研究機関を動員して大規模無差別検査をやろうとすると人や資材の問題大きいのですが、何よりも最も問題になる検査精度が犠牲になってしまうということで、山中教授の提案は現実的なものではないと言えそうです。

 ではPCR検査の能力確保について、どのような議論が行われたのでしょうか。これについてまずは専門家会議が発信している情報を確認するのがよいと思います。

 5月初めに行われた国の専門家会議でもこのことには触れられています(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000629000.pdf)。それによると

 検査待ちなどが当初多く発生した原因として

①帰国者・接触者相談センター機能を担っていた保健所の業務過多、

②入院先を確保するための仕組みが十分機能していない地域もあったこと、

③PCR 等検査を行う地方衛生研究所は、限られたリソースのなかで通常の検査業務も並行して実施する必要が
あること、

④検体採取者及び検査実施者のマスクや防護服などの感染防護具等の圧倒的な不足、

⑤保険適用後、一般の医療機関は都道府県との契約がなければ PCR 等検査を行うことができなかったこと

⑥民間検査会社等に検体を運ぶための特殊な輸送器材が必要だったこと、またそれに代わることのできる輸送事業者の確保が困難だったこと

などが考えられるとしています。

その後は、様々な見直しと関係者の努力により、保健所を介さないと検査できない体制などが解消され、ある程度は改善されたとのことです。

今後の備えとして、さらなる体制の拡充が望まれるところですが、それについては、

① 保健所及び地方衛生研究所の体制強化及び、労務負担軽減
② 都道府県調整本部の活性化(重点医療機関の設定や、患者搬送コーディネーター
の配置など)
③ 地域外来・検査センターのさらなる設置
④ 感染防護具、検体採取キット、検査キットの確実な調達
⑤ 検体採取者のトレーニング及び新たに検査を実施する機関における PCR 等検査の品質管理
⑥ PCR 等検査体制の把握、検査数や陽性率のモニターと公表

といった対策が提案されています。

即効性のある対策はすでにやりつくしているので、保健所の強化のような、平時からの備えを地道にやっていくような対策となっています。予算を増やし、人員を増やし、機材の備蓄を増やして年単位の時間をかけて取り組む必要が、あるのでしょう。実際、PCR検査センターの設置など、そういった方向の取り組みがなされてきているようです。

 7月上旬現在、新型コロナウイルスによる重症者数は大きく減少し、新たな死者・重傷者はほとんどでなくなりました。感染確認数は東京などで伸びていますが、感染者との接触者を症状にかかわらず幅広く検査したり、ナイトクラブ関係者の集中検査によるものです。感染者数に踊らされることなく、無症状感染者のリスクの程度などを適正に注視していきたいものです。

 




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