八ッ場ダムと2019年台風19号まとめ
昨年の台風19号において、試験湛水中の八ッ場ダムが一気に満水近くまで水を貯め、効果を発揮した件については、概ね情報の発表が一巡したように思いますのでそろそろ書いてみたいと思います。
この件については、「八ッ場ダムが利根川を洪水から救った」「いや、効果は少なく役に立っていない」「試験湛水中であり、運用開始後と比較して低い水位だったからまだ効果があったのであり、運用後はこれほど効果はない」といった言説が飛び交いました。どれが正しいのかは当時の利根川の状況について、具体的にみていく必要があります。
利根川の河川水位についてデータがあり話題となったのは「栗橋」地点です。栗橋は利根川中流にあり、江戸川との分流地点よりもやや上流にある地点です。この個所は築堤区間であり、断面図は国土交通省の川の防災情報によると以下のようになっています。
河川断面図に、氾濫危険水位や避難判断水位などが表示されています。地図やグーグルストリービューによると前後の河川断面はあまり変化がなく、代表的な断面のように見えます。
台風19号による豪雨時は氾濫危険水位を超過し、9.67mまで水位が上昇しましたが、幸い越水には至りませんでした。断面図から判断すると堤防天端高は11m程度のようなので、越水まであと1.3mというところまで水位が上昇したことになります。元東京都環境科学研究所研究員の嶋津暉之氏の試算によると、八ッ場ダムによる水位低下効果は栗葉地点で17cmであったとしています。数字だけ見ると、残り1.3mが1.1mになるだけなので、八ッ場ダムの効果は特になかったという言説はここからきています。
しかし、河川断面図から見ると、9.67mという水位は堤防の中腹を超えて天端に近くなっており、長時間続けば浸透水によってて破堤する危険の高い水位であり、17cmの水位低下は破堤の危険を下げたと思われます。また、氾濫注意水位である5.00あたりから周囲の提内地(河川堤防の外側にある宅地や農地)よりも河川水位が高くなることから、周囲の雨水が排水できないために発生する内水氾濫の危険がある水位となります。このような危険の低減にも17cmの水位低下は意味があったといえます。
大河川である利根川の本川は1つのダムでできる洪水調整能力は限られており、もともと多数のダム群を整備して洪水を防ぐ計画となっていました。
利根川上流の国管理のダムは八木沢ダム、奈良俣ダム、藤原ダム、相俣ダム、薗原ダム、下久保ダム、草木ダム、渡良瀬貯水池の8基が整備されています。これらの貯水状況は次のグラフの通りです。
ソース:http://www.dam-net.jp/contents/water_source.html
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