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2019年10月14日 (月)

試験湛水中の八ッ場ダムが台風で一気に満水近くに

 紆余曲折を経た八ッ場ダムでしたが、今年(2019年)6月に本体コンクリートの打設をすべて完了し、10月1日よりダム本体工事の卒業試験となる試験湛水を開始していました。出水時期を避けて冬に実施される試験湛水ですが、八ッ場ダムについては満水になるまで3~4ヵ月かかる見込みとのことであったので、その後の水位低下の日程も考えて1月には満水に達するようにまだ大雨の可能性がある10月に開始したということだろうと想像します。

 試験湛水を始めたばかりの八ッ場ダムでしたが、今回の台風19号による大雨によって、一気に満水近くになったようです。(八ッ場ダム、一気に「満水まで10m」…台風で54m上昇

 大雨を飲み込んだことにより、下流の水位を下げる効果は間違いなくあったでしょう。ダムのある利根川水系吾妻川では12日には氾濫注意水位は超過していたようです。また、八ッ場ダム以外に利根川上流で運用中の8つのダムでは合計1億㎥ほどの流水をため込んだようです。どのくらい効いたかは今後の検証に注目したいと思います。

 治水用のダムのような自然災害への対策施設はごくたまにしか、効果を発揮することはありません。また、どのくらい効果があったかは後で検証しないと情報ができてきません。さらに、その数すくない効果発現のときにはその施設が守っているところ以外のところで災害が多発するため、報道もそちらに集中してしまう結果、施設が災害を防いだというニュースはあまり発表されません。2018年の台風21号では関西国際空港が水没するなどの大きな被害が発生しましたが、一方で、大阪湾や淀川に築かれていた堤防・水門が海沿いの大阪市街地を高潮から防御し、1300億円の建設費に対して17兆円の防災効果があったとのことですが、ニュースとしては見た記憶がありません。2017年の九州北部豪雨では、ダムのある河川が被害を免れるということがあったようです。

 今回の八ッ場ダムについては、群馬県内で今回氾濫した河川がなかったことから考えると、おそらく「八ッ場ダムが利根川を救った」というほどの美しい物語にはならないように思います。しかし、ダムが治水効果を発揮することの印象的な事例として、ある程度の注目を集めたことはよかったと思います。

 

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コメント

SmartNewsに掲載されていた河川の専門家の試算によると、下流の水位が17cm下がったそうです。
そして、下流域の堤防と最高水位の差は2mであったそうです。
自民党の議員らやその支持者らがここぞとばかりに旧民主党系議員らを責め立てましたが、八ッ場ダムの効用は、今回の豪雨に関しては、特に無かったとの事です。

Papageno さん コメントありがとうございます。

 いくらか情報が出てきたようですね。
 17cmの水位低下とは、八ッ場ダムの建設反対運動をしてきた「八ッ場あしたの会」が紹介している元東京都環境科学研究所研究員の嶋津暉之氏による試算で、利根川中流・埼玉県久喜市の粟橋地点における試算ですね。

利根川のような大河川の本川で17cmの水位低下とは、一つのダムとしては大きな効果です。

 今回の台風19号では、粟橋地点で氾濫危険水位の8.90mを超え、9.67mに達したとのことです。この粟橋付近は築堤区間であり、横断図から判断すると11m程度に見え、堤防天端まではあと1.5mほどありそうです。もちろん河川水位が堤防天端高を超えれば越水して氾濫するわけですが、その水位に至らなくても破堤により氾濫となることはあります。
 今回の水位は堤防の中腹を超えており、この水位でも長時間継続すれば破堤の危険があったはずです。

 記事にも書いたように利根川上流で運用中の8ダムでもかなりの洪水調節を行っており、合計すれば数十cmの水位低下効果があったと思われます。ダム群が水位を下げたことによって破堤の危険度は相当下がったと思います。また、本川の氾濫に至らない水位といえども、河川水位が高くなれば内水氾濫の危険が高まります。堤防の中腹まで水位が来ていたならば、内水の排水はすでにしにくい状態だったことも考えられます。

 調べた限りの情報からすると

 今回の台風19号では利根川上流のダムが一つもなかったとしても堤防天端からの越水に至った可能性は低いが、破堤の恐れがある危険な量の出水があり、試験湛水中の八ッ場ダムを含めたダム群の効果により堤防の安全度を相当高めた。

 といったところではないかと考えます。

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