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2018年5月 1日 (火)

ケーブルで音が変わる理由1 電気的特性による音質変化1

 オーディオにおいて単なる電線の交換でなぜ音が変化するのか(本当に音が変化するのか)ということは長年論じられてきました。

 

 本当に音が変わるかどうかということについては、変化が聞き取れてしまえば疑いの余地はなく、多くの方がケーブル交換による音質変化を報告しています。したがって、ケーブルにより音質が変化することは疑うことの出来ない事実であるとしか考えることが出来ません。

 

 音質が変化する原因については、タイムドメインの由井社長が、ケーブルを伝わる縦振動が原因であるという考え方を示しています。この考え方がケーブルによる音質変化を非常にうまく説明できるものであり、逆に、これ以外にはケーブルの音質変化をうまく説明できる論理は出てきていません。
 ですので、私は、本来すでに決着しているものであると考えています。ここからは、なぜ縦振動が原因で音質変化が生じるという考え方が妥当であるのかを論じていきます。
 まあ、私ごときが書くのか?という疑問は大いにあるのですが、待っていても誰も書きそうにないので筆を取った次第です。

 

ーケーブルの電気的性質で音が変わるか?その1-
 ケーブルで音が変化する原因として、まず考えがちなのはケーブルの電気的性質による音質の変化です。このことを検討した例として、オーディオに関する有名なサイト「オーディオの科学」があります。
 このサイトは、「あまりお金をかけずに演奏会にできるだけ近い雰囲気で家庭で音楽を再現するために、どのようなオーディオ装置を構築すればよいかを物理学的、技術的側面から検討した」と称しており、その記事の中で、スピーカーケーブルが音質に影響を与える可能性のある要素として、次のものを挙げています。
 (1) 直流抵抗値 (2) 表皮効果 (3) 静電容量 (4) 自己インダクタンス (5) 自己振動によるロス (6) その他、渦電流損失など

 

 このサイトでは、これらの影響の計算結果(主に周波数特性の変化)を示しています。その結果によれば
 
(1) の直流抵抗については、

 

・抵抗による損失により若干のパワーロスがある。
・抵抗がダンピングファクターに影響し、制動力低下がありうる。
としています。少し離れたところでは、もともとダンピングファクターが低いアンプならば影響は少ない、また、一般的にはダンピングファクターは20もあれば十分とする見解を紹介しています。
(2) 表皮効果 (3) 静電容量 (4) 自己インダクタンスについては、計算例を示し解説しています。それによれば、(4)が最も効果があるが高域に微妙に効くかもしれない程度であり、ケーブル長が非常に長くない限りは可聴帯域では問題とならないとしています。

 

 示されている計算結果について一つ紹介すると、最も影響が大きい自己インダクタンスについてはある条件の並行2線ケーブル(長さ4m)について試算し、20kHzで位相遅れ3.5°減衰-0.016dBという計算結果を示しています。かなり小さい数値のうえ、ケーブル同士の相対値ならばより小さいため、これば原因でケーブルで音が変わるということは考えにくいと思います。
(5) 自己振動によるロスについては抵抗によるロスの1億分の1程度であり(できればdBで書いてほしいと思いますが)全く問題にならないとしています。なお、自己振動とは往復のケーブルに電気信号が流れることにより働く引力と斥力によりケーブルが左右に振動する現象のことです。
(6) その他、渦電流損失などについては特に根拠を示していませんが、可聴域では問題にならないはずだと書いています。
 さらに、このサイトの別のページでは同軸構造のピンケーブルについても同様の要素で論じており、それによれば同軸構造の場合はLよりもCが支配的であるという点が異なるが、やはり上記要素の影響は小さく、問題になるものではないとしています。

 

 以上は、アナログケーブルについての検討でありデジタルケーブルについては別に検討しなければなりません。この「オーディオの科学」ではデジタルケーブルについても項目を設けています。それによると、信号が多少変わってもデーターは変化しないこと、信号の変化によるジッターの変化は検知限界以下であるとの研究結果を引用しケーブルによる変化はないと述べるにとどまっています。
 これらを読んでみて、周波数特性ばかり強調し、波形そのものの変化はどうなか述べられていないところが気になりますが、影響が微小であるというところは間違いなさそうに思います。
 また、この「オーディオの科学」におけるケーブルに関する計算について「AVケーブルの教科書」というサイトが批判を行っています。この「AVケーブルの教科書」においては計算方法の批判のほか、周波数特性の変曲点が音質上問題があるとの推測や、人間の耳が捉える波形の変化を考えれば可聴域と呼ばれる20kHz以下だけでなくもっと上の周波数特性も影響するはずであると主張しており、だからケーブルの電気的特性により音質は変わるとの立場をとっています。
 しかし、AVケーブルの教科書」とオーディオの科学」に載っている結果を見比べると、大局的にはどちらの計算結果もあまり変わりません。また、「AVケーブルの教科書」はわずかな電気的な違いが大きな音質差を生むことに対して理由づけを述べることができていません。
 これらのことからすると、「オーディオの科学」が主張する電気的性質による音質への影響は軽微であり、聞いてわかるほどの違いはないであろうとの結論は動かないのではないかと私は見ています。

 

 この「電気的性質による音質への影響は軽微である」と考えることの別な根拠については次のエントリーで述べたいと思います。

 

(念のため繰り返しますが、私はケーブルで音が変わることは動かない事実であると考えています。)

 

 
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