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2017年2月18日 (土)

卑弥呼は前方後円墳に葬られたか

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 土木学者の小澤一雅氏の著した前方後円墳、魏志倭人伝、および記紀年代等について、数理的分析を元に総合的に考察した書籍です。
目次
序章 邪馬台国を数理で読み解く
第1章 古代を解く鍵はなにか
第2章 邪馬台国論争を数理的に再検討する
第3章 古代天皇の崩年を合理的に推定する
第4章 古代の人口と政治支配
第5章 前方後円墳の形を分析する
第6章 前方後円墳の時代
第7章 海を越えて活動する倭人
第8章 邪馬台国を眺望する
終章 はるかなる古代―探究の歩みと展望

 

 安本美典氏の一連の著作に続く、数理モデルに立脚した日本古代史に関する考察です。安本氏は平均在位年数による古代の天皇の実際の崩年を推測した結果、神武天皇を三世紀末、天照大神の時代を三世紀中ごろの卑弥呼の時代と重なる時代であると主張し、注目を集めました。安本氏の示した計算方法は、歴代天皇を時代別にいくつかに区切り、それぞれの平均を求めて変化傾向を示し、初期の天皇においては平均在位年数が10年であったと推測しています。この方法については、平均を算出するための区切り方が作為的であり、少し区切りをずらすと結構替わってしまうという批判があります。

 

 小澤氏は同様の推測を行っていますが、数代の天皇の在位年数平均の変化を追跡する、院政が行われた時代を異常値として除外するといった手法により厳密化を図っています。安本氏とやっていること自体は変わらないのですが、作為的な区切り方による結論の誘導が結果に影響を与えていないことがわかりました。推計方法に起因する誤差は依然として存在するものの、天照大神や神武天皇の年代が3世紀半ばおよび3世紀末であるとの計算結果はひとつの目安を与えるものであることが確認できたと考えます。

 

 次に小澤氏は、古代人口と古墳の規模、形状という数理について考察していきます。まず古代の人口とそのなかで国家が動員できる支配人口の推計を行い、その結果を踏まえて、箸墓が卑弥呼の墓であるかどうかを検討しています。その結果、邪馬台国の支配人口では箸墓の体積を有する古墳の築造は不可能であっただろうと推測しています(逆に崇神天皇の時代ならば可能)。

 

 小澤氏は、上記のほかにも多角的な数値情報のそして、多少の文献資料の整理をおこなった上で、箸墓古墳は卑弥呼の墓ではなく、邪馬台国の所在地も九州に比定するのが妥当だとしています。

 

 小澤氏の計算結果については、他の証拠により検証し、信頼度を確認していく必要があるのでしょうが、一つの適正な析方法と結果を示しているのではないでしょうか。

 

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