「古事記」と「日本書紀」の謎
この書籍は大阪中之島にあるロイヤルホテルの文化教室「エコール・ド・ロイヤル」で「ロイヤル日本史講座」として開催された講演を再構成し書籍化したものとのことです。
著者は写真の通り、上田正昭、岡田精司、門脇禎二、坂元義種、菌田香融、直木孝次郎です。書店の歴史コーナーには似たようなタイトルの素人歴史家の書籍が並んでおりますが、こちらは歴史学の専門家6名が著者となっております。
この6名の歴史学者がそれぞれ古事記と日本書紀についての考察を行っているのですが、さすがに専門家らしく、学問の世界では当然なのですが、仮説の根拠が明瞭に示され、どうしてそう考えているのかが分かるように書かれています。素人歴史家の書いた本ですと、たまたま知った知識をもとに想像に想像を重ねてぶっ飛んだ結論になっているものが散見されるわけですが、この本では豊富な知識に支えられた安定した議論が展開されています。
記述の中には「継体王朝」など、記紀の記述は作為による架空の物語が多く含まれるとする史観に基づく見解も見えますが、全体に論拠を明確に示している分だけ、継体新王朝説や欠史八代説などははっきりした根拠がないことも結果的に良く分かるようになっています。
(具体的には、岡田精司氏は継体新王朝説を採っているのですが、継体天皇が応神天皇5世孫であるという記紀の記述について「事実ではないと思います」と述べているのみで、それを裏付ける根拠としてあまりめぼしいものがあげられていません)
細かい事項になってくると専門的過ぎて読みにくいところも多少あるのですが、あくまで一般人向け講座の内容を一般向け書籍としたものという範疇に収まっており、概ね読みやすく書かれています。
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