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2014年12月 8日 (月)

新版 PCオーディオガイドブックの感想

Pc

 『「PCオーディオを高音質化する」ということにこだわった島幸太郎氏の同人誌「PCオーディオガイドブック」が一般書籍になって登場』という触れ込みで出版された書籍の新版です。
 著者のブログによるとPCオーディオの入門者~中級者に向けた本であるとしています。
 私はこの本についてはことさらに買おうとは思って今なかったのですが、本屋の店頭で見つけたので(2011年秋の発売から半年ほど経っていたと思います)、買ってみました。
 かなり立派な装丁に仕上がっており、専門書然とした面構えです。私が見つけた本屋ではなんとPCに関する専門書のコーナーにおいてありました。価格のほうも専門書並みの価格設定となっており、2,380円+税とやや豪華なお値段となっております。とはいっても限られた印刷部数の自費出版ですからこの価格の高さもやむを得ないとは思います。

章立ては次のようになっています。
第1章 PCオーディオの下準備(オーディオ入門編)
第2章 PCオーディオの基礎知識(PCオーディオ入門編)
第3章 PCオーディオへの理解を深めるための知識(PCオーディオ応用編)
第4章 高音質PCオーディオ実践編
第5章 PCトランスポート模索編(ハードウェア編)
第6章 PCトランスポート模索編(ソフトウェア編)
第7章 PCトランスポート発展編

 入門者~中級者向けというとおり、入門者でも読み始められるように書かれており、PCオーディオの基本的な構成について解説されています。第1章、第2章は入門者向けに書かれた内容であり、前ページモノクロなので見栄えは地味ですが、書店の雑誌コーナーに並んでいるPCオーディオ本と比べても遜色ない読みやすく分かり易い内容となっていると思います。そして、それらの本が最後まで入門者向けの記事で終わってしまっているのに対して、このPCオーディオガイドは第3章以降でさらに専門的な記述が始まります。

 第3章は入門編を脱した初級編ともいうべき内容となっています。バイナリやジッターに関する知識を含めて、PCから音が出る仕組みについて解説しており、デジタル領域における音質変化についてもいろいろな方の探求結果をまとめ上げて丁寧に書かれています。かなり力の入っているところです。PCオーディオが一般的になってきてからどのような議論が行われてきたのか、まとめたものを本の形で読みたい場合には有効でしょう。内容については、独自に研究した部分があるわけではなく主にネットで資料集めをした結果ですので、ネットでも時間をかけて調べれば同等以上の情報を集めることはできます。ただし、参考URLがきちんと書かれているので、デジタル領域の音質変化要因に関する技術的考察についてこれから調べて行きたい場合にはこの本を参照することによってかなり手間が省けるという効能はあります。


 第4章はPCオーディオの構築を実践するという章ですが、次の第5章の簡易版的な内容となっています。第5章はオーディオ用として高音質のPCをつくるためのハードウェア対策について模索を記したものとなっています。ここでは筆者の理解する範囲内でPCのパーツ選びやさらなる高音質化対策について述べています。こちらも文章量が多く、執筆にかなりの労力がかかっていることは確かです。
 音質に影響のあるパーツとして、①オーディオインタフェース、②電源、③マザーボードとなっています。筆者の経験からの判断との事ですが、たしかにこれらの影響は大きいのでしょう。私の経験からいけばこれら以上に「ケース」が重要であり、ここに「ケース」が入っていないのは違和感があります。この著書においても、ケース選択の重要性については言及しており評価できますが、剛性の高いものを選ぶべきだとはしていますが、3要素に入れていないところを見るとそれほど重要な要素とは考えていないように思われます。この著書ではノートPCまたは自作PCという勧め方をしていますが、自作PCで高音質を目指す場合は振動対策が重要になるため、振動対策をやっていく覚悟がない場合はノートPCを薦めるべきであろうと思います。 

 内容を見ていくと、筆者の経験から書いている部分はたしかに納得できますし、一応参考になるのですが、論理だけで書いていて、本当にそうなのか判断しにくいところがあったり、主要な要素を捉えていないのではないかと思えるところもあります。たとえば
マザーボードの選択について、電解コンデンサで選ぶ方法が提示されていますが、はたしてどの程度支配力があるものなのか疑問です。「かないまる」氏は音質対策を狙って搭載するコンデンサを選んでいるマザーボードに限って音が悪い、4P電源コネクタと20P電源コネクタがくっついているものは高音質の可能性が高いと述べています。このことからもコンデンサの選定などは音質を決定付ける主要な要素ではなく、マザーボードの形状や電源のとりかた、部品のレイアウト、回路の引き回しパターンなどによって支配されているのではないかと想像しますが、そこまでの検証には至っていないようです(やろうとするとものすごくたいへんだと思いますが)。
 そのほか、PC内部の電源ケーブルは捻るとノイズ対策になるとか、メモリにはヒートシンクをつけるべしといったことが断定的に書かれていますが、異論のある問題でもあり、どのような試聴結果が得られたのかを示して欲しいものです。なお、メモリを多く積みすぎると音質が悪くなるという試聴感は注目されます。
その他、ノイズ対策や電源改善のためのアクセサリーの紹介は、このあたりに知識がない方には参考になるでしょう。
 第6編はソフトウェア編として、OSの設定や再生ソフトの紹介と設定などが記されています。高音質のPCオーディオを目指すならば知っておきたい知識です。同じような記述がある書籍やwebサイトはいくつもありますが、すべてをもれなく網羅したものはありませんので、いくつも目を通しておく必要があり、この書籍もいくつもあるガイドの中のひとつと認識しつつ読んでいくと良いと思います。
 第7編はDAC選びとワードシンクについての解説と見解を記述しています。


 PCオーディオにおいて、音が変化する要素、そして、音が変化する要因についておかなわれた議論について広くカバーした書籍に仕上がっています。結論めいたことは少ししか書かれていないのですが、音質向上に取り組むために工夫する要素としてどのようなものがあるかが列記されています。どうすればよくなるか、結論を書くよりも各読者の探求のためのガイドを提供するという思想で書かれているようです。
出来るだけ音が変化する原因について理論的に説明しようと試みており、理論について説明したものや個人では難しそうな測定を行った興味深いwebサイトが多く引用されており、理論や測定について分かっていることを調べて見たい場合は役に立つでしょう。そして、理論的に正しいはずと筆者が判断したものについては断定的にこれが良いと述べている部分も見られます。一方で、著者が聴感上感じれらた経験については記述が限定的となっています。
 理論的に正しいと判断して、すべきと断定している手法のうち、PC内部の電源ケーブルをツイストする、シールドするというものがあります。どちらもケーブルに飛び込む外来ノイズを低減する目的で実施するという判断をしているものです。しかし、ツイストやシールドをすると、ケーブルの振動パターンが変化してしまうためそれによって音質が劣化する場合があるでしょうし、シールドについては導線との静電容量とか帯電の問題がありそうです。それらの影響が評価できていないならば、絶対に正しいとは言い切れません。
 ツイストやシールドが必ずしも正しくないとする見解が出されている例として、「かないまる」氏はPC内部の電源ケーブルはツイストしない方が良いといっていますし、タイムドメインの由井社長はツイストしたケーブルはシールドを剥がした方が音が良くなるとしています。

 筆者は執筆に当たり、入門者の存在を強く意識したと述べています。入門者がPCオーディオははじめる場合はまず基本的な再生方法を調べ、その次に音質向上方法について探そうとするのでしょうが、その際にはデジタルデーターが同一でも音が変化するのかどうか、理論的に機構が解明されているのかどうか気になるでしょうし、やがて経験を積んでくれば、実践的な音質向上策が図れるようになってくると思います。多分著者である島幸太郎氏もそのようにステップアップを経験してきたのではないかと想像されます。その意味では、入門者が短期間に中級者以上にステップアップしたい場合は良いガイドとなる可能性はあります。
 一方で、独自の経験に基づいてこのような方法が音質向上に役立った、またはこのような音質向上手法が唱えられているが、試してみるとこうだったという類の記述はごく少ないために、すでに中級者以上である場合は余り役に立つところがないということも事実です。
この本の著者のブログを含め、PCオーディオについてネットで広く情報収集しているという方には購入する意味が薄いと思われます。幾らかは参考になりそうな経験談も語られているものの、その種の記述が全体に少ないために、その体験談を評価することが難しくなっています。

 以上、この書籍がお勧めのなのは個人での執筆の限界として、間違った見解が含まれていることを了解の上、

・PCオーディオ入門者であり、短期間に中級者以上にステップアップしたい方。
・PCオーディオ入門者であり、これまでに行われてきた議論について、短時間に知りたい方
・情報収集を完璧にしたい方
ではないかと思います。実践的な音質向上手法のみを求めたい方には参考になる内容が多くはありません(その場合はこちらが良いと思います)、また、コストパフォーマンスを求める方にも薦められません。

 以上、否定的な意見も書きましたが、この著書が多くの内容をまとめた労作であることは確かですし、高音質を追求するPCオーディオの普及に効果が期待されるというところでは、刊行された意味は大いにあったと考えます。



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