2009年から2012年にかけて、雑誌Audio BasicのMOOKとして「PCオーディオfan」という書籍がNo.1からNo.6まで刊行されていました。それぞれを読み返しながら感想を書いてきました。
No.1の編集後記には
前人未到の地、というのは大げさですがせいぜい「けもの道」や猟師・山菜取りが通う程度の道に、せめて車が1台通れるような道路を作りたい・・・。そんな思いではじめたこのMOOK作りですが、作業は困難を極めました。
ーー中略ーー
拙い道ですが、ぜひ「PCオーディオ」という魅力あふれる面白い場所にお出かけください。そして、皆さんからの声を参考に、この道を快適な高速道路に作り変える工事に再び取り掛かれることを楽しみにしています。
という志の高い文章がありました。No.1は確かに、マニアが先行して探求してきた再生方法を取り込み、基本的な使いこなしからPCの設定や機器の選定方法など、充実した内容となっており、この編集後記の文章に恥じない出来栄えではありました。
では、その後、多少は切り開かれたPCオーディオの道はこの雑誌によってさらに改良されていったのか?というと、後ろのNoに向かってオーディオメーカーの作る製品紹介のウエイトが大きくなり高音質を目指した探求のための記事は少なくなっていってしまいました。メーカーからの聞き取り内容のなかに参考にすべき点が若干見えることもありました。また、No.4のUSBケーブル比較試聴は明瞭に温室評価を下した非常に優良な記事でありました。しかし、製品紹介の多くはその音質についての積極的な評価がなく、優劣が全く分からりませんでした。総じて新製品のパンフレット集のような近年のオーディオ雑誌と同様となってしまいました。
No.4においてはPCにおいても電源対策や振動対策が効果的という重要な指摘もしているわけですが、結局使える可能性があるオーディオメーカ製品を列挙しただけで終わってしまい、具体的にどんな対策をしたらどう音が変化するのか、深く追求されることがなかったことは非常に残念です。
また、PC本体や音楽データファイルを収納するHDD等についての選定はPCオーディオマニアの大きな関心事であると思いますが、そのための比較試聴記事もOn爺氏の記事に少し載っただけで情報量としては限定的でした。編集部として組織的に取り組んでいれば、もっともっと役に立つ記事が出来たのではないでしょうか。
以上、この6冊の書籍を通して、PCオーディオの探求について、入り口から少し先までは立派な道路が出来たものの、中級者までの道は快適な道路と呼べるほどの改善にはならず、その先の上級者への道についてはいくらかの道しるべが立っただけに終わったという気がします。
贅沢な望みかもしれませんが、今後、再びこのような書籍が企画されるのであれば、ぜひ、雑誌編集部でしか出来ないようなPCオーディオの高音質化のための記事を作っていただきたいと思います。
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