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2014年3月 2日 (日)

「卑弥呼と神武が明かす古代」について

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 タイトルのとおり、日本古代史に関する本です。著者紹介によると著書の内倉氏は朝日新聞記者だったようです。

 内容の中心は邪馬台国時代の倭国に関するものとなっています。皇国史観を強烈に嫌っていますが、かといって戦後の津田史観にも流されず、神武天皇についても実在煮の人物としています。邪馬台国の位置についても多数派となっている畿内説には批判的であり、基礎となる情報を収集し、適切に分析することにより、真実に迫ろうとする姿勢は評価できます。

 高千穂の位置に関する追求など、事実関係からの考察は良いのですが、そこから連想に連想を重ねているため結局は事実である可能性が皆無である空想物語になってしまっているところは残念なところです。

 中国史書に示された漢字の読み方について問題としているのですが、ここで致命的な間違いをしています。この内倉氏は魏志倭人伝等は南方系の発音である「呉音」ではなく、北方系の発音である「漢音」で読まなければいけないとし、奴国は呉音に基づく「ナコク」ではなく漢音で「ドコク」と読み、倭は「イ(ヰ)」と読むべきであるとし、そこから論理展開していきます。

 「漢音」「呉音」という言い方は遣隋使、遣唐使を送っていた頃に出来た呼び方であり、隋唐の長安で使われていた発音に対し、日本人が元々使っていた漢字の読みがかつての「南朝」の発音の様だということで、「呉音」と呼ばれるようになり、隋唐の発音の方を「漢音」というようになったようです。倭の五王の時代に東晋や宋と交流するのに使っていたのでしょう。東晋はもともと洛陽に都していた西晋が異民族に攻められて遷ってきた王朝であり、その後の宋も東晋の武将が王朝を乗っ取ってたてられたものであり、初代皇帝となった劉裕の徐州の出身です。ですので、魏志倭人伝やその元資料が作られた魏や晋の発音に近い音となると、むしろ呉音の方であり、「漢音で読むべき」という主張は全く間違ったものと考えられます。

 また、「奴」は漢音では確かに「ド」ですが、中国語の北方方言では今も昔も「濁音」が全くなく従って、「ド」という読みも、日本人がそのように聞き取ったというだけのことであり、実際には「ノ」のような音だったのだろうと想像します。現代北京語では「奴」はnuであり、母音は揺れがあるものの子音は呉音と同じ「n」のままです。倭についても音読みはワまたはヰであり、この内倉氏「イ」と読んでいますが、現代北京語ではwoであり、またヰ(wi)がイに転じてしまっているのは単に現代日本語の問題であり、中国語においては子音wがつく(ワ行である)という点ではぶれていないのですから「イ」と読ませるのは相当に無理があると考えます。
 このような誤解を含んだ情報から連想を重ねているので、連想の先にある結論は見ても仕方のないものだと思わざるを得ません。

 以上、この本についてはあまり参考になるとも思えずおすすめではありません。


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