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2020年2月16日 (日)

平成14年の官庁訪問

平成13年までの官庁訪問記を書いてから、数年経ってしまいましたが、続きを書きます。

繰り返して書くと、私は専攻分野は地球科学で、できれば研究職につきたいと考えていました。国家公務員採用I種試験は平成8年と平成11年~16年に受験しました。

 

平成14年は国土地理院、海上保安庁、土木研究所を訪問しました。

 

国土地理院はこれまで通り、

企画調整課課長補佐の概要説明→所内見学→企画調整課長面接

という流れでした。

所内見学の後、控室に入って課長面接の順番を待ちますが、この年から、所内見学を案内し、控室に一緒に待機している若手職員が何やらメモを取るようになった。

課長面接は、面談という名目が次第に薄れ、面接らしい形式になってきていた。昔は課長から名刺がもらえたが、このころはなし。また、役職は不明(専門官あたり?)だが、職員がもう一人つくようになった。課長は2年交代で、平成12、13年は同じ方だったが、14年に赴任された方であった。

ごく普通の面接で、それほど特別なことはなかったが(昔のように執拗に質問を促され続けることもなかった)、どこで自己PRできるのか難しいと感じた。課長でない方の職員は受験者の評価を手帳につけていた。少し見えたところでは項目別にAまたはBとつけているようでした。

国土地理院からは例によってその後連絡はなく不採用。

 

海上保安庁は築地ある海洋情報部(旧・水路部)を訪問し、所内のいくつかの部署を順に回らされて、課長補佐あたりと話をし、最後に採用の権限があるらしい課長と面接。

この年度は残念ながら地質職の採用は考えておらず、「流れの方の人」(海流の解析ができる職員だろうか?旧試験区分でいうと物理か水産)を採用するとの話であった。

もともと海上保安庁の地質職は4~5年に1名程度の採用しかしていないのでほぼ門前払いでも仕方がないのだろう。

平成14年時点ではまだ業務説明のための面談という建前が残っており、課長補佐3人ほどとは本当に業務説明と業務に関する雑談(民間企業のセミナー似たいな感じかな)。課長との面談でも、ジュースが出された。

課長は地質職の方であり、海上保安庁の業務の中で分かった地質に関する話もしてくれた。

海洋情報部の主要な業務の一つは調査船で日本近海の海底の探査を行い、地形地質を調査すること。地質屋が能力を発揮できる研究的要素のある業務ですが、大学等の研究機関とは異なり、新たな知見は必ずしも不要でデータが出ればOKの図幅調査であり、行政事務としては国土地理院の地形図発行とほぼ同じとのことであった。地質で採用された職員は若いうちは研究的な仕事をするが、やがては昇進とともに行政職になっていってしまうらしい。

私は研究職希望だとは言いませんでしたが、課長はそれを感じ取ったようでした。

課長は海底を調査した結果至った見解を話してくれました。

地質学の一般的なイメージだと、海底は堆積物がいつもたまり続けていると考えているようなところがあるが、実際にはそのような場所は東京湾などのごく一部の場所に限られ、一般的な海底だと一時的に堆積物がたまってもやがては移動してしまう。たから地層を作っている堆積物はある短期間にドーンとたまったものだと考えられる。

といったような内容でした。地質境界には整合、不整合、断層、貫入があり、後の3者については教科書に明確な説明がありますが、「整合」については明確な説明がありません。連続して堆積しているなら堆積物の変化は必ず漸移的になり、明瞭な面を形成できないはずですが、そこはs説明がありません。

確かに地層が短期間に堆積したものの集合体であるなら、地層の「整合面」がどのようにしてできるのか、合点がいきます。

この課長はこの話を地質の専門家にするとみなそうだそうだと言ってくれる(自説には自信がある)が仕事が忙しくて、学会発表くらいならすぐできるが、論文にする暇がないと言っていました。まあ、半分雑談なのですが、海上保安庁に入ったら研究的な面白い仕事は確かにあるが、あくまで行政職であり、研究を期待してくる場所でもないということを伝えたのだろうと思います。

まあそういうわけで、海上保安庁も連絡はなく不採用。

 

独立行政法人土木研究所地質研究室は平成13年の省庁再編以降では初めての新規職員採用を考えていたようでした。前回の採用は平成7年(平成8年4月勤務開始)と省庁再編前の建設省土木研究所だった時代でした。そのため、職員の方も採用をどう進めていいかよくわかってな¥いなかったようです。

昔の採用は建設省として募集され、採用予定委部局が土木研究所となっていたわけですが、独法になれば土木研究所としての募集となります。しかし、そこがうまく整理されていなかったため、たらいまわしのようになってしまいました。人事院の発表する採用予定数表にも土木研究所の記載はなく、私は大学の求人掲示板で募集があることを知りました。

一応、土木研究所を訪問し、担当の佐々木主任研究員(当時)と面談した後、地質職のトップである中村康夫地質監(当時)の面接を受けました。そのほか、若手職員の案内による所内見学がありました。土木研究所は学生も技官もいない大学のようで、機械の世話なども全部研究員がやっている(その割に本省オーダーで突如新しい機器などが入ってくる)から大変だと言っていました。

土木研究所地質研究室は結局調整がうまくいかなかったのか、この年はだれも採用しませんでした。

 

以上で、平成14年は終わっていきました。

 

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2020年1月31日 (金)

みてすぐわかる現代文

1985年発行の大学受験参考書。カバーによると古文(グリデン式とあり)や漢文もみてすぐわかるシリーズとして出版されていたようです。

Img_29421

現在は絶版となっています。

私の本棚に読まずに長いこと眠っていました。(高校生当時も読まなかった)

現代文の入試問題を解くための20のポイントについて、簡潔に解説されている。

初めのほうに、文学史や漢字、文法の解説がある。今どきはこの辺の力の入った出題をする大学がどのくらいあるのか、現在の大学入試問題の傾向なんかはフォローしていないのでよくわからないが、あまり多くはないのではないだろうか。

今回取り出して、読んでみると、結構面白い。20のポイントは現代文の大学入試問題を解くための基礎事項であり、基本ががっちりと押さえられるようになっている。現代文が苦手な高校生だけではなく、現代文は得意だが勘に頼って問題を解いているような層にも有効であろう。

文学史やことわざを読んでいると、有名な小説などのあらすじを網羅的に把握したくなってくる。学習意欲を駆り立てられた。捨てようと御持ったけれども、もうしばらく置いておこう。

簡潔にまとめられている分、入試問題とは形式が異なることや、今となっては古風な問題となってしまっている点などから、受験直前の高校生が読むと混乱するかもしれない。高校2年生や高校3年生の1学期あたりだと、短時間で一通りの基礎固めができるので良いと思います。

プレミアム価格でこれから入手するほどの価値はないとは思うが、手に入れる機会があれば、持っていてもよいと思います。1000円以下なら買いだと思います。

 

 

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2020年1月18日 (土)

八ッ場ダムと2019年台風19号まとめ

 昨年の台風19号において、試験湛水中の八ッ場ダムが一気に満水近くまで水を貯め、効果を発揮した件については、概ね情報の発表が一巡したように思いますのでそろそろ書いてみたいと思います。

 この件については、「八ッ場ダムが利根川を洪水から救った」「いや、効果は少なく役に立っていない」「試験湛水中であり、運用開始後と比較して低い水位だったからまだ効果があったのであり、運用後はこれほど効果はない」といった言説が飛び交いました。どれが正しいのかは当時の利根川の状況について、具体的にみていく必要があります。

 利根川の河川水位についてデータがあり話題となったのは「栗橋」地点です。栗橋は利根川中流にあり、江戸川との分流地点よりもやや上流にある地点です。この個所は築堤区間であり、断面図は国土交通省の川の防災情報によると以下のようになっています。

 河川断面図に、氾濫危険水位や避難判断水位などが表示されています。地図やグーグルストリービューによると前後の河川断面はあまり変化がなく、代表的な断面のように見えます。

  台風19号による豪雨時は氾濫危険水位を超過し、9.67mまで水位が上昇しましたが、幸い越水には至りませんでした。断面図から判断すると堤防天端高は11m程度のようなので、越水まであと1.3mというところまで水位が上昇したことになります。元東京都環境科学研究所研究員の嶋津暉之氏の試算によると、八ッ場ダムによる水位低下効果は栗葉地点で17cmであったとしています。数字だけ見ると、残り1.3mが1.1mになるだけなので、八ッ場ダムの効果は特になかったという言説はここからきています。

 しかし、河川断面図から見ると、9.67mという水位は堤防の中腹を超えて天端に近くなっており、長時間続けば浸透水によってて破堤する危険の高い水位であり、17cmの水位低下は破堤の危険を下げたと思われます。また、氾濫注意水位である5.00あたりから周囲の提内地(河川堤防の外側にある宅地や農地)よりも河川水位が高くなることから、周囲の雨水が排水できないために発生する内水氾濫の危険がある水位となります。このような危険の低減にも17cmの水位低下は意味があったといえます。

 大河川である利根川の本川は1つのダムでできる洪水調整能力は限られており、もともと多数のダム群を整備して洪水を防ぐ計画となっていました。

 利根川上流の国管理のダムは八木沢ダム、奈良俣ダム、藤原ダム、相俣ダム、薗原ダム、下久保ダム、草木ダム、渡良瀬貯水池の8基が整備されています。これらの貯水状況は次のグラフの通りです。

利根川上流8ダム貯水量

 

栗橋地点上流域図

ソース:http://www.dam-net.jp/contents/water_source.html

 グラフ青線(令和元年)の10月を見ると台風19号時の貯水状況がわかります。これによると8ダムの合計で約1億m3程貯水しているように見えます。八ッ場ダムの台風19号による貯水は7,500万m3であったため、9ダムでは八ッ場ダム単体の約2.3倍貯水したということになります。さらに利根川上流には国の9ダムのほかに、県の管理する洪水調節機能を持ったダムも複数あります。単純に計算できるものではありませんが、これらのダム群による水位低下効果は50cm以上は見てもいいのではないでしょうか。ダムが一つもない場合は、上流から流木が多く流れてくることとなります。水面から堤防天端までの余裕はほぼ橋梁桁下の余裕に近く、それが1mを切ってくる状態で流木が多く流れてくれば、橋桁に流木が捕捉され、橋梁上流側の水位が上昇して越水することが懸念されます。
 そこまで考えれば、八ッ場ダムを含む上流ダム群が利根川を洪水から守ったとはいえるのでないかと考えます。
 なお、国土交通省のほうは、より上流にある八斗島地点においてダム群により約1mの水位低下効果があったとの試算を発表しています。八斗島地点は栗橋よりも上流にある観測地点であり、上流にある分だけよりダムによる水位低下が大きい地点であろうと思われます。八斗島 で2019年台風19号では氾濫危険水位まで上昇しなかったことから、より危険な状態となり話題となった栗橋地点で考えてみました。

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2019年12月30日 (月)

古いゲームソフト等を売却

 本棚で眠っているPCソフトのうち今後使うことはないだろうものを中古ショップ買取に出しました。X68000のソフトが主ですが、WIN95/3.1やMac(OS7あたり)も入っています。古いPCソフトを扱っている名古屋の漫遊堂というショップをチョイス。こちらはゲームや古本、おもちゃやポスターなどの中古を取り扱っています。X68000ソフトの取り扱いがあるか問い合わせたとところ買取可能とのことであったのでこちらに売ることにしました。

 写真のソフトに2本ほど追加(多分ほぼ価値はない)して着払い宅急便で送ったところ、合わせ送った主に90年代の雑誌類と合わせて7000円(振込手数料は店側が負担)になりました。

 まとめて処分でき、良い取引だったと評価しています。

 

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2019年10月22日 (火)

バカの壁

 だいぶ以前の本になってしまったこの本ですが、購入したまま読んでいなかったので、いまさらながら読んでみました。

バカの壁 [書籍]

 売れた本だけあって、読みやすく、サクサク進みます。初めは現代社会で重要な一般的な情報リテラシーの話、つづいて個性を伸ばすよりも共通理解が大切、個性の発揮よりも他社の理解が大切といった話などが並んでいます。

 内容的にはちょっと薄いです。なるほどと思うところもあるものの「現物のリンゴと頭の中にある情報としてのリンゴは異なる」といったような「それはそうだが・・それで?」という主張も多くあります。概ね「説教臭い愚痴」といったところでしょうか。

 そこまで極端ではないものの、「文明を忘れて、自然に帰ろう」的な雰囲気のある主張だと思います。この本を読んで積極的に何かを得られる、考えさせられるといった要素はあまりありませんでした。

 ということで、たくさんある考え方の一つとして、ちょっと読んでみるのもよいとは思いますが、私としては買って家に置いておくほどの本とは思えませんでした。まあ若い人の中にはこの本が刺さる・必要な方もあるかもしれません。

 

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2019年10月14日 (月)

試験湛水中の八ッ場ダムが台風で一気に満水近くに

 紆余曲折を経た八ッ場ダムでしたが、今年(2019年)6月に本体コンクリートの打設をすべて完了し、10月1日よりダム本体工事の卒業試験となる試験湛水を開始していました。出水時期を避けて冬に実施される試験湛水ですが、八ッ場ダムについては満水になるまで3~4ヵ月かかる見込みとのことであったので、その後の水位低下の日程も考えて1月には満水に達するようにまだ大雨の可能性がある10月に開始したということだろうと想像します。

 試験湛水を始めたばかりの八ッ場ダムでしたが、今回の台風19号による大雨によって、一気に満水近くになったようです。(八ッ場ダム、一気に「満水まで10m」…台風で54m上昇

 大雨を飲み込んだことにより、下流の水位を下げる効果は間違いなくあったでしょう。ダムのある利根川水系吾妻川では12日には氾濫注意水位は超過していたようです。また、八ッ場ダム以外に利根川上流で運用中の8つのダムでは合計1億㎥ほどの流水をため込んだようです。どのくらい効いたかは今後の検証に注目したいと思います。

 治水用のダムのような自然災害への対策施設はごくたまにしか、効果を発揮することはありません。また、どのくらい効果があったかは後で検証しないと情報ができてきません。さらに、その数すくない効果発現のときにはその施設が守っているところ以外のところで災害が多発するため、報道もそちらに集中してしまう結果、施設が災害を防いだというニュースはあまり発表されません。2018年の台風21号では関西国際空港が水没するなどの大きな被害が発生しましたが、一方で、大阪湾や淀川に築かれていた堤防・水門が海沿いの大阪市街地を高潮から防御し、1300億円の建設費に対して17兆円の防災効果があったとのことですが、ニュースとしては見た記憶がありません。2017年の九州北部豪雨では、ダムのある河川が被害を免れるということがあったようです。

 今回の八ッ場ダムについては、群馬県内で今回氾濫した河川がなかったことから考えると、おそらく「八ッ場ダムが利根川を救った」というほどの美しい物語にはならないように思います。しかし、ダムが治水効果を発揮することの印象的な事例として、ある程度の注目を集めたことはよかったと思います。

 

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2019年10月 3日 (木)

スピーカーケーブルの抵抗はどこまで上げてよいか?

 これまで、オーディオシステムにおいてケーブルの選択によって音が変わる理由や高音質ケーブルの条件について考えてきました。その結果、ケーブルで音が変わる主たる原因は縦振動であるというタイムドメイン由井社長の主張が確認できました。そして、高音質ケーブルの条件としては、振動を伝えないために「柔らかいこと」が最も重要な条件であるらしいことがわかりました。由井社長はケーブルは細ければ細いほどよいとしていますが、ケーブルの太さと音質だけを見ると、必ずしも細いものほど高音質とは限らないように思えますが、振動の伝わり方は細さだけでは決定しないことによるのでしょう。細く作ったほうが柔らかくなりやすく、類似の材料と構造で作られているば、細いケーブルのほうが柔らかくなり、音質上は有利になると思われます。

 ところで、オーディオファンならば常識ですが、アンプの制動力を示すダンピングファクター(DF)という指標があります。これはご存知の通り、DF=(スピーカーのインピーダンス)/(アンプの内部インピーダンス)+(スピーカーケーブルのインピーダンス)で表され、大きいほど制動力があり、小さすぎると余計な余韻が付いたたるんだ音となります。

 DFと音質の関係として、よく引用されるものは下記のものです。
Dfctorgh

 ダンピングファクターと周波数特性の変化

出典: 「強くなる!スピーカ&エンクロージャー百科」誠文堂(1980) P38

 この図を見ると、DFが3を超えると変化が小さくなり、10以上ではDFの違いによる音質変化が極めて小さくなることが推測できます。このため、DFは20もあれば十分などと言われてきました。

 ここで、たとえばスピーカーのインピーダンスを8Ω、スピーカーケーブルのインピーダンスを0.03Ωとしたときに、DF>20とするためには内部インピーダンス0.37Ω以下(カタログ上DF>21.6)のアンプを用意すればよいこととなります。トランジスタアンプならばこの程度の製品はたくさんあるでしょう。スピーカーケーブルは太めで抵抗(電線ならば直流抵抗≒インピーダンス)が小さいものを選べば0.03Ω未満程度なら簡単に実現できるため、このようなケースであれば、スピーカーケーブルの抵抗の影響はわずかであり、また、さらに抵抗の小さいスピーカーケーブルを使ったところでDFが(スピーカーのインピーダンス)/(アンプの内部インピーダンス)の数値に近いていくだけです。そのため、さらに低い抵抗のスピーカーケーブルを使う意味はなく、ケーブルの抵抗を気にする必要はないといえます。

 ところが、ケーブルが細いほうが音質上有利であるという話になってしまうと、状況が変わってしまいます。細いスピーカーケーブルは電気抵抗がそれなりに存在し、DFを下げる要因となるため、DFはどこまで下げてもよいか、下限を見極める必要が出てきます。

 例によってタイムドメイン由井社長の発言から拾うと、スピーカーケーブルの抵抗値は1Ω程度以下を目安とすると述べていますhttps://www.facebook.com/timedomain/photos/a.119482074850606/691913014274173/?type=3&theater 。(同時に抵抗をめちゃくちゃ下げるのは無意味としています)

 タイムドメインの製品で見るとYoshii9のスピーカーケーブルは0.2sqのライカル線であり、標準では延長が約3mです。往復6mならば抵抗は0.56Ωとなり、1Ωの目安に対して多少の余裕があるようです。また、ライカル線にはさらに細い0.1sqの製品がありますが、こちらを往復で6m使用すると1.12Ωとなり、1Ω以上となるため、0.2sqを採用したのかもしれません。ただし、電気抵抗ではなく断線しにくいための強度を考慮して0.1sqではなく0.2sqを選定したということも考えられますので、1.12Ωという電気抵抗値を高すぎると判断したとは言い切れません。

 この0.2sqのライカル線ですが、標準で採用されているYoshii9の試聴記や数は少ないものの他のシステムに組み込んで使用しているブログ等を見る限り、ダンピングファクター不足と思われる症状は出ていないようです。私もYoshii9のほか、イクリプス307を使ったサブシステムにも0.2sqライカル線を片道2mほどで使用していますが、とくに支障は感じません。

 そこで、このライカル線と同程度以上の抵抗を持つスピーカーケーブルを使った試聴記をいろいろと調べてみたいところではありますが、スピーカーケーブルとして一般に使用されている電線はより太く電気抵抗が低いものが大半であり、通常の長さで1Ω付近やそれ以上の抵抗となるものがなかなかありません。極細のスピーカーケーブルを使用してみたとする記録でも、ライカル線よりも太いものが多く、あまり参考になりませんでした。ただし、ライカル線よりも太いものの、一般的なスピーカーケーブルからみれば極細の部類に入るものを利用しても、音質的には向上したという趣旨ものもが多く、また、明確にダンピングファクター不足が生じたという事例は皆無であることから、幅広いシステム構成においても、ライカル線以下の抵抗値のスピーカーケーブルであれば支障がなさそうだということがわかります。

 長尺のスピーカーケーブルを使えば、高い抵抗値でどうなるのかを試すことができますが、これについても家庭のオーディオでは必要にならないため、事例があまりありません。唯一まとまった量の試聴結果がみられるのが、プロケーブルの「音の焦点合わせ」です。まあ、これとても、「解像度を上げると音がキン付き、スピーカーケーブルを伸ばして音を緩め調整しなければキツくて聞けない」という症状が発生するシステムのデータしかないので(なお私としてはこのような調整が不要であるシステムがオーディオシステムとして正しいものであると考えています。)、どのくらい使えるデータなのかという疑問は残ります。それでも実施結果をまとめてみると(https://star.ap.teacup.com/teoclete/179.htmlに一覧表がまとめられています)。チャイムコードでは往復抵抗値が1Ωになるのが15m程度、VVF1.6だと50m程度となることから、抵抗値が1Ω前後以上のところで調整しているように見受けられ、ダンピングファクターの低下によって音質が大きくなり始めるところがスピーカーケーブルの抵抗1Ωあたりなのではないかと推測できます。

 極細スピーカーケーブルの有用な試験となるとやはりたくぼんさんのブログに依存となってしまします。

スピーカーケーブルの考察

http://tackbon.ldblog.jp/archives/51548173.html

これによると、1Ω以下のケーブルは抵抗が大きいことによる不具合は出ていませんが、6.4Ω/5mの電話線、16.9Ω/5mのRSCB芯線では「音が劣化してエコーがかかったようになった」と述べています。

 

 Yoshii9使用だと、このような記録もありました。

Timedomain yoshii9用超極細自作スピーカーケーブル(0.025mm(25μm))

 この事例だと、0.025mm(25μm)のスピーカーケーブルをYoshii9に取り付けています。これだと抵抗は数十Ωになっているように思いますが、非常にクリアな音になったとしています。こちらはどう考えればよいのか、悩みます。

 まとめるとスピーカーケーブルの抵抗は1Ω以下であれば問題はなく、1Ωをいくらか超えても良さそうではあります。

 スピーカーケーブルの抵抗が1Ωならばスピーカーが8Ωのとき、DFは最大で8に制限されることとなります。そこからさらにアンプの内部インピーダンスによってDFがさらに低下することや、スピーカーケーブルの抵抗が1Ωを多少超えても大丈夫だということを考えると、DFの必要最低値は8よりもかなり下にありそうに思えます。ダンピングファクターと周波数特性の変化の図ではDFが1以下では音の劣化がありそうなのでDFの必要最低値は2~4あたりではないかと思えます。


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2019年3月10日 (日)

高音質ケーブルの条件2

 縦振動(音波)を伝えにくいケーブルがオーディオ用として高音質のケーブルであるということで、そのように縦振動(音波)を伝えにくいケーブルとはどのようなケーブルなのか、いくつかの物質の振動の伝わり方(音波速度)を調べてみました
 その結果、物質の代表的な音波速度だけでは、決め手にはならないように思えました。ただし、音波速度がケーブルの音質に対する重要なファクターであることは本当らしいという傾向は認められたと思います(例えば、アルミを導体としたケーブルは音質評価が悪いことや絶縁体ではテフロンがPVCよりも高音質材料とされていることなどが説明できる)。

 銅などの性質からたどる方法は限界になったため、別の方法を考えます。そこで、細い線状の固体を通して音波を伝える道具である「糸電話」を取り上げます。音の良いオーディオ用ケーブルとは、縦振動(音波)を伝えにくいケーブルであり、糸電話の糸としては性能の悪いケーブルであると考えられます。

 糸電話の糸について調べて見ます。

 糸電話の研究についてはいくつか見つかれるのですが、やはり教育目的の実験や小中学生の自由研究のようなものがどうしても多くなります。


・糸電話について、調べてわかった参考になりそうな項目です。

 多くの資料に書かれていることとしては、以下のものがあります。(たとえば、https://dramacontents.com/archives/1489など)

・音を媒介する振動は主として縦振動である。
・低音は高音よりも減衰しやすい。
・糸電話は糸の長さが100m以上でも聞こえる
・細くてしなやかな材料が良い
・太い糸は低音を伝えやすく、細い糸は高音を伝えやすい
・ゴムを使うとあまり聞こえない
・細い方が遠くても聞こえやすい、しかし、いろいろな実験結果を見ると太さを変えてもさほど変わらないとか、まれに、太めの方がよく聞こえたというものもある。
・針金を糸の代わりに使うとエコーがかかって聞こえる
・針金をばねにするともっとエコーがかかって聞こえる
・しっかり糸を張ると振動がよく伝わり、良く聞こえる。糸がたるむと聞こえない。針金の場合多少曲がっても聞こえる。

こちらも小学生の研究ですが、小学生とは思えないほどよく書けています。
https://www.city.chiba.jp/kyoiku/gakkokyoiku/kyoikushido/documents/14oto.pdf
固い材料の方が減衰が小さい
糸の代わりに針金を使うと非常に減衰が少ない
細くて固い針金と太くて柔らかい針金を比較すると前者の方が音がよく伝わった。絹糸、水糸などでは太さを変えても音の伝わり方は変わらなかった。

ゴムを糸の代わりに使った場合一応音は伝わるが小さい。引っ張るとゴムが変位しなくなるため、もっと聞こえなくなる。
(file://kjd-prof/redirect/t-mura/Downloads/kojinkasei13-20.pdf)

針金を使った糸電話の場合、たるんでいても音が伝わる。(たるんだ状態の)細い針金では音が伝わらず、太い針金ならば聞こえやすくなる。
(https://www.kitashirakawa.jp/yama-blog/?p=6257)

 こんなところで、なかなか明快な情報はありませんが分かること、考えられることをまとめると、

 ケーブル状の形状をした比較的固さのあるもの(針金のほか、しっかり張った糸を含む)は振動の減衰が少ない。そのため、ケーブルを伝わる振動は減衰しにくい。

 糸電話に使う糸の太さと音の伝わり方の関係は明快ではありませんが、http://kozu-osaka.jp/cms/wp-content/uploads/2017/08/2013020.pdf(糸の本数を増やして実験)をみると、糸が太い場合に聞こえにくくなるケースは、振動が拡散して不明瞭になることが原因ではないかと思いました。もしかして、波長の長い低音の場合は糸が太くても不明瞭になりにくいのでしょうか?総合的にみると、同じ材料で同じ状態であれば、伝わる振動の大きさ自体は太い糸の方が大きいように思えます。 

 太くても柔らかいものは音を伝えにくい。

 針金を使うとエコーがかかる理由については、針金は振動の減衰が小さいことを原因に挙げる見解が多いようです。これについては針金と紙コップの底という二つの物質の音響インピーダンスの違いが大きいために反射しやすいという原因もあると思います。


 以上のことから、高音質ケーブルの条件について考えます。縦振動を伝えにくいケーブルがオーディオ用として高音質のケーブルであるという仮説から考えると「柔らかい」という性質が有利に働くと思われます。太さについては明瞭ではないが、細い方が振動が伝わる量としては少ないようであり、オーディオ用ケーブルは太さが細い方が有利と考えます。金属線については柔らかくなる傾向にあることも併せて考えると、細い方が望ましい可能性が高いが、柔らかさがより優先度の高い事項ではないかと思います。


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2019年2月26日 (火)

ケーブルの絶縁体

 前回、高音質ケーブルの条件を検討するために重要と思われる固体を伝わる縦振動(縦波音波)速度について調べました

 その直後に平蔵さんのケーブル絶縁体に関する記事が出ました。アコースティックリバイブ石黒社長からのコメントによると、ケーブルの絶縁体は音質的に

PVC < ポリエチレン < テフロン 

とのことです。

その理由として、誘電率の違いを挙げています。

石黒社長のコメントによるとそれぞれの誘電率は

PVC:5.6
ポリエチレン:2.4
テフロン:2.2

とのことです。

 テフロンは誘電率が低いために音質が良いということ(他に誘電正接なるものもあると書いていります)であり、定性的には低い誘電率が信号伝送上有利であることは間違いありませんが、音質上の影響程度については私は疑問を持っています。

 そこで、ふと思ったのが、この音質差が縦振動(縦波音波)の伝わり方によっているのでないかと思いました。

 前回調べたいろいろな物質の縦振動(縦波音波)速度の数字のうち、ケーブル絶縁体に使用するものを拾ってみると、


シリコーンゴム 1,000m/s
テフロン 1,520m/s
低密度ポリエチレン 2,080m/s
ポリ塩化ビニル(PVC 2,395m/s


(ポリエチレンには高密度というものもありますが、電線の被覆はこちらのようです)

ここで、数字を見るとテフロンがポリエチレンやPVCよりも速度が低く、このことがテフロンの高音質につながっているのではないかと見ることが可能です。

ところでシリコーンゴムであれば音波速度がさらに低く、より高音質の材料ではないかとも考えられます。(オーディオ用電線としては、ライカル線しか製品を知りませんが)シリコーンゴムの誘電率をこちらでみてみると60Hz:2.7~4.2、MHz:2.6~2.7となっており、ポリエチレンよりも高いようですので、シリコーンゴムを絶縁体に使用したケーブルがどうなのか知ることができれば、より、音質に影響する要素が見えてくるのではないかと思います。


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2019年2月16日 (土)

高音質ケーブルの条件1

 タイムドメイン由井社長の指摘通り、ケーブルによる音の変化を支配するものはケーブルを伝わる音波(縦振動)であるということで、高音質のケーブルの条件は音波(縦振動)を伝えにくいケーブルであるということになります。
 タイムドメインの製品としては、振動を伝えにくくするため、Yoshii9のスピーカーケーブルとして柔らかいシリコン皮膜を使い、0.2sqと細くヒョロヒョロのライカル線を採用しています。また、アンプYA-1の内部配線は毛のような超極細の電線を使用しているようです。
 そのほか、製品にはできないやり方ですが、皮膜を剥いだケーブルにガン玉(釣りのおもりに使う鉛玉)を加締めて防振するという手法を示しており、一部のタイムドメインファンはそのような自作ケーブルを使用しているようです。
 ということで、答えが示されているものではありますが、この答えについてどうなのか一応調べてみたいと思います。
 
 まず、金属などの固体を伝わる音波の減衰について調べてみようとしてのですが、ズバリ書いてあるものは見つかりません。波の減衰については利用があまりされていないためと思われます。減衰率については、波の速度と関係があり、速度が速いほど減衰が少なく伝わりやすいということのようです。
 固体を伝わる音波の速度については、工業製品材料の厚さ測定や土木構造物の損傷診断などの応用分野があるためかまとめられたものが容易に見つかります。例えば下記のような資料があります。
https://www.olympus-ims.com/ja/ndt-tutorials/thickness-gage/appendices-velocities/
http://5mhz.site/archives/263
https://www.dakotajapan.com/mpseries/point/speed-sound.html
2番目のサイトには音速を求める公式があり、
とあります。
オーディオに使いそうな材料を含んで縦波音波速度の数字を拾ってみると
                                                                                                       
シリコーンゴム
1,000m/s
水銀 1,450m/s
1,500m/s
テフロン
1,520m/s
低密度ポリエチレン
2,080m/s
2,160m/s
ポリ塩化ビニル(PVC
2,395m/s
高密度ポリエチレン
2,460m/s
アクリル(パースペクス)
2,730m/s
ガラス繊維
2,740m/s
3,250m/s
3,320m/s
鋳鉄(軟質)  3,500m/s
3,610m/s
プラチナ 3,960m/s
黄銅
4,430m/s
4,660m/s
鋳鉄(硬質)
5,600m/s
ニッケル
5,640m/s
マグネシウム
5,840m/s
酸化鉄(磁鉄鉱)
5,890m/s
チタン
6,100m/s
アルミニウム
6,320m/s
シリコン
9,620m/s
ベリリウム
12,900m/s
ダイヤモンド
18,000m/s
 
(ただし、シリコーンゴムはhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/koron1944/14/152/14_152_620/_pdf/-char/ja
によった)
 これらは、おそらくは塊状で標準的な状態の速度を示したものなのだろうと思われます。リンク先の記事に注釈があるものもありますが、「これらの物質内の実際の音速は、具体的な組成や微細構造、粒子または繊維の配向、多孔性、温度など、さまざまな要因により大きく異なることがあります。」と書かれており、あくまで目安であるとの注釈があります。そして、資料により数字のばらつきが結構あります。また、材料による固有の鳴きも音に影響するはずですし、ケーブルならばたわんだ状態と張った状態では違います。ですので、ここからどの材料が良いか直接判断できるものではありません。
 それでも、数字を眺めてみると、やはり柔らかいものは速度が遅く、固い(硬い)ものは速度が速いという傾向が分かります。そして、ニッケルメッキよりも(低速度の)金メッキがよいのかとか、使いどころによっては制振材として有効な鉛もやはり低速度なのかといった感想も浮かびます。鉛のケーブルを作ってみたら高音質だったりするのでしょうか(作るには大投資が必要だと思いますが)。音速の公式から行くと密度の高い物質のほうが低速度になりそうですが、低密度ポリエチレンよりも高密度ポリエチレンの方が高速度であるところをみると、密度を上げることにより、体積弾性率や剛性率がより上がるのだろうと思われます。水銀はかなり低速度ですが、水銀で作ったケーブルは電気抵抗が高いにもかかわらずなかなか音が良かったという話(個性的な音との試聴記もありますが)も思い出します。
なお、固体の音波(振動)速度を低くし、音波(振動)を減衰させる構造としては、「気泡」や「傷」があります。傷が入った電線だとか気泡入りの電線(作れるかどうかわかりませんが)とはあまり現実的でない気がしますが、現実的には接点を入れてやるという方法はあります。由井社長は振動を遮断するという発想でケーブルの間にキャノンコネクターを挟むことにより振動の遮断を試みたことがあったとのことです。その結果は音質的には悪化してしまったとのことであり、接点による振動対策は電気的な不利が大きく効果が出にくいということだろうということだと思います。ただし、皮膜については傷とか気泡というやり方も「あり」かもしれません。ラダーケーブルの音質評価が割と高いのは、皮膜が連続していない構造であることにより皮膜を介した振動伝播が少ないことが主たる原因ではないかと私は考えています。
 
 ということで、傷などがないまともな銅線について、状態の違いによる物性の違いを知りたいわけですが、どうもネットで普通に検索する程度ではあまり情報が出てきません。
「銅」や銅線ないし金属線の硬さについて調べると、わかることはこれくらいです。
・硬くなった銅を焼きなます(アニーリングする)と軟化する。
・強度が要求される硬銅線は常温で線引加工することにより製造される。硬銅線をアニーリングすると軟銅線となる。
・純度が高いほうが低温でアニーリング効果がある。超高純度の細線では常温でも軟化する。
・太い電線は曲げた時の最大歪が大きいため曲がりにくく、細い電線は曲がりやすい。
・太い金属線は硬く、細い金属線は柔らかい傾向となる。
電線が細いほど「柔らかく」なりやすいことは事実のようですが、この「柔らかさ」とは曲がりやすさだけを意味しているのか、それともそれに伴って縦振動も伝えにくくするような柔らかさなのかはよくわかりませんでした。直感的には後者だと思うのですが、物理学的な裏付けは見つかりませんでした。
銅や金属の一般的な性質を調べる方法はこのあたりが限界のように思うので、また別の方法を考えたいと思います。


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